
ルイ・アームストロング「この素晴らしき世界」
ルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界(What a Wonderful World)」は、時代を超えて愛され続ける名曲のひとつだ。シンプルなメロディと深く味わいのある歌声、そして心温まる歌詞が多くの人の心を癒してきた。この曲は、世界の美しさと日常の小さな幸せを讃える内容であり、平和のメッセージも込められている。洋楽ファンやミュージシャンにとっても、歴史的な名演として外せない楽曲だ。ここでは、その魅力を改めて紹介していく。
曲の概要
「この素晴らしき世界」は、1967年に録音され、翌年にシングルとしてリリースされた。
当時のアメリカは、公民権運動やベトナム戦争など社会的な混乱の中にあったが、この曲はそうした時代背景の中で「世界にはまだ希望と美しさがある」というメッセージを伝えるために作られた。
歌詞には、「青い空、白い雲、緑の木々、赤いバラ」といった日常の風景が描かれ、それがいかに素晴らしいかを語っている。
さらに、「赤ちゃんの泣き声」「友人が握手を交わす姿」など、人生の温かい瞬間が優しく歌われている。
このシンプルで普遍的なメッセージが、多くのリスナーの心に響き、時代を超えて愛される理由のひとつになっている。
音楽的には、ジャズの要素を取り入れながらも、シンプルでゆったりとしたバラード調のアレンジが特徴だ。
ルイ・アームストロングの深みのある歌声と、控えめながらも情感豊かなオーケストレーションが、曲全体に温かみを与えている。
作詞・作曲とプロデューサー
作詞を担当したのはボブ・シール、作曲はジョージ・デヴィッド・ワイスが手がけた。ジョージ・デヴィッド・ワイスは、「ラヴァーズ・コンチェルト」や「キャント・ヘルプ・フォーリング・イン・ラヴ」など数々の名曲を生み出した作曲家として知られる。
プロデューサーはアート・レイドンが務め、ルイ・アームストロングの温かみのあるボーカルを最大限に生かすシンプルなアレンジを採用した。ストリングスとアコースティック楽器を中心にした編成が、曲の穏やかで希望に満ちた雰囲気を引き立てている。
チャート
「この素晴らしき世界」は、1967年にイギリスでシングルとして発売され、全英シングルチャートで1位を獲得した。しかし、アメリカでは発売当初あまり注目されなかったという意外なエピソードがある。その後、1988年に映画「グッドモーニング、ベトナム」で使用されたことをきっかけに再評価され、アメリカでも広く知られるようになった。
現在では、世界中のさまざまな場面で使用されるスタンダードナンバーとなり、平和を願う楽曲として、国や世代を超えて親しまれている。
ミュージック・ビデオ
「この素晴らしき世界」には、当時の正式なミュージック・ビデオは存在しないが、ルイ・アームストロングがこの曲を歌う映像は多数残されている。特に、1968年のテレビ番組で披露したパフォーマンス映像は、彼の優しい笑顔と温かい歌声が印象的で、今でも多くのファンに愛されている。
また、後年の映像作品やドキュメンタリーでは、この曲のレコーディング風景やアームストロング自身の人生を振り返るシーンで頻繁に使用され、彼の象徴的なナンバーとして定着している。
ルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」は、単なるヒットソングではなく、人々に希望と癒しを届ける音楽の力を象徴する名曲だ。洋楽ファンにとってはもちろん、ミュージシャンにとっても「歌とは何か」「音楽にできることは何か」を考えさせてくれる作品だと言える。改めてこの曲を聴き、音楽の持つ普遍的な力を感じてほしい。
Louis Armstrong - What A Wonderful World (At The BBC)