
デューク・エリントン「テイク・ジ・“A”・トレイン」
スウィング・ジャズ黄金期の象徴とも言えるナンバー、それが「テイク・ジ・“A”・トレイン(Take the “A” Train)」だ。ニューヨークの地下鉄“A線”をテーマにしたこの曲は、ビリー・ストレイホーンが作曲し、デューク・エリントン楽団の代表曲として1941年に世に送り出された。
曲の概要と背景
当時のアメリカでは、エリントン楽団が活躍の場を広げる中で、新たなテーマ曲が求められていた。そこで登場したのが、エリントンの右腕とも言える作曲家・編曲家ビリー・ストレイホーンが手がけた「テイク・ジ・“A”・トレイン」だ。この曲名は、ニューヨークのハーレムに向かう地下鉄“A線”にちなんでおり、都市のスピード感や高揚感をそのまま音楽に落とし込んだような仕上がりになっている。
音楽的特徴
冒頭のピアノ・イントロからはじまり、華やかなホーンセクションが流れるようにメインテーマを奏でる。エリントン楽団のアレンジによって、原曲の持つ軽快さと洗練された雰囲気がより際立ち、各パートのバランスも秀逸。ミュート・トランペットやソロパートの即興演奏も見どころで、スウィング・ジャズの魅力を凝縮したような一曲だ。
文化的影響
「テイク・ジ・“A”・トレイン」はすぐにエリントン楽団のテーマ曲として定着し、ラジオ、テレビ、映画などで何度も使われた。ジャズ史においても頻繁に演奏されるスタンダードとなり、多くのミュージシャンがカバーしている。とくにニューヨークのハーレム文化を象徴する曲としても知られており、アメリカの黒人音楽史における重要な位置を占めている。
おわりに
ビッグバンド・ジャズが最も華やかだった時代、その中心にいたのがデューク・エリントンと彼の楽団だった。「テイク・ジ・“A”・トレイン」はその代名詞とも言える楽曲であり、今なお多くのジャズファンに愛されている。軽快でありながらも深みのあるこの一曲は、スウィング・ジャズの魅力を存分に味わうには最適なクラシックといえるだろう。