
デイヴ・ブルーベック・カルテット「テイク・ファイブ」
1959年、アメリカのジャズ界に新たな風が吹き込んだ。
その中心にいたのが、**デイヴ・ブルーベック・カルテット(The Dave Brubeck Quartet)**と、彼らの代表作「テイク・ファイブ(Take Five)」である。
奇数拍子を大胆に取り入れたこの楽曲は、ジャズ史だけでなく、ポピュラー音楽全体においても革命的な存在となった。
曲の概要
「テイク・ファイブ」は、ブルーベック・カルテットのアルトサックス奏者ポール・デスモンド(Paul Desmond)によって作曲され、1959年のアルバム『Time Out』に収録された。
この曲の最大の特徴は、ジャズとしては非常に珍しい5/4拍子。タイトルの「ファイブ」はそこから来ている。
ブルーベック自身はクラシック音楽の影響を強く受けており、この楽曲にもバルトークやストラヴィンスキーを彷彿とさせるようなリズム感が表れている。
音楽的特徴
イントロで印象的なピアノのコードカッティングが繰り返され、その上にポール・デスモンドの柔らかくメロディアスなアルトサックスが乗る。
ドラムの**ジョー・モレロ(Joe Morello)**による5拍子のリズムキープと中盤のドラムソロも非常に個性的で、構成はシンプルながら、斬新な拍子感と洗練された即興演奏が見事に融合している。
社会的・文化的インパクト
「テイク・ファイブ」は、インストゥルメンタルのジャズとしては異例の大ヒットを記録し、ビルボード・ホット100にもチャートイン。
その後、テレビ番組やCM、映画などでも多数使用され、**「ジャズといえばこの曲」**という認識を持つ人も少なくない。
また、5/4拍子という変則的なリズムにもかかわらず、これほどまでに多くのリスナーを惹きつけたことは、音楽的な“常識”を打ち破った象徴的出来事だった。
おわりに
「テイク・ファイブ」は、ただの“変わり種ジャズ”ではない。
5拍子という大胆な試みによって、聴き手の耳を刺激しながらも、決して難解にはならず、むしろ親しみやすさと中毒性を両立させた名曲だ。
今なお世界中のジャズ・ミュージシャンやリスナーに愛され、カバーされ続けているこの曲は、20世紀の音楽史における永遠のスタンダードである。