
ホイットニー・ヒューストン「アイム・エヴリ・ウーマン」
ホイットニー・ヒューストンは、その圧倒的な歌唱力とカリスマ性で世界を魅了したシンガーの一人だ。彼女の代表曲のひとつに「I'm Every Woman」がある。この曲は、もともと1978年にチャカ・カーンが歌い、R&Bファンの間で長く愛されてきた楽曲だが、1992年にホイットニー・ヒューストンがカバーしたことで、さらに広い層に知られることとなった。特に、映画『ボディガード』のサウンドトラックに収録されたことで、彼女のバージョンも大ヒットを記録した。ここでは、この楽曲の背景や制作陣、チャート成績、ミュージックビデオについて詳しく見ていく。
曲の概要
「I'm Every Woman」は、女性のパワーを称えたアンセムであり、歌詞の中では「私はすべての女性の代表であり、あらゆることをこなせる」といった内容が歌われている。この曲は、オリジナルのチャカ・カーン版ではディスコとファンクを融合させた軽快なアレンジが特徴的だったが、ホイットニー・ヒューストンのカバーでは、より90年代のR&Bサウンドが加えられ、ダンスフロア向けの楽曲として進化した。
ホイットニーのバージョンは、彼女の歌唱力を存分に活かしながら、原曲のエネルギッシュな魅力も損なわないようにアレンジされている。彼女のヴォーカルは、ダイナミックな表現力と柔らかさを兼ね備え、楽曲の持つポジティブなメッセージをさらに際立たせている。
作詞・作曲とプロデューサー
この曲の作詞・作曲は、著名なソングライター・デュオのニック・アシュフォードとヴァレリー・シンプソンが手がけた。彼らは、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルの「Ain't No Mountain High Enough」やダイアナ・ロスの「Ain't No Mountain High Enough」など、多くのソウル・R&Bの名曲を生み出してきた伝説的なコンビだ。
ホイットニー・ヒューストン版のプロデュースを担当したのは、ナラダ・マイケル・ウォルデン。彼は80年代から90年代にかけて、ホイットニーの多くのヒット曲を手がけており、「How Will I Know」「I Wanna Dance with Somebody (Who Loves Me)」などの楽曲でもプロデューサーを務めた。彼のプロダクションは、オリジナルの持つグルーヴ感を保ちつつ、当時の最新のR&B/ダンスミュージックの要素を取り入れたものになっている。
さらに、この楽曲のホイットニー版では、バックコーラスにチャカ・カーン本人が参加している。これは、オリジナルのシンガーに対するホイットニーのリスペクトの表れでもあり、楽曲にさらなる深みを加えているポイントだ。
チャート
ホイットニー・ヒューストンの「I'm Every Woman」は、1993年にシングルとしてリリースされ、アメリカのビルボード・ホット100で4位を記録した。また、R&Bチャートでは1位に輝き、彼女のR&Bアーティストとしての実力を改めて証明する結果となった。
さらに、イギリスのシングルチャートでは4位にランクインし、世界的にもヒットを記録した。オリジナル版のチャカ・カーンのバージョンもヒットしていたため、この曲は異なる時代で二度にわたって大きな成功を収めたことになる。
また、映画『ボディガード』のサウンドトラックに収録されたことも、この曲の成功を後押しした要因のひとつだ。同アルバムには、「I Will Always Love You」などの名曲も収録されており、サウンドトラック全体が驚異的な売上を記録した。
ミュージック・ビデオ
「I'm Every Woman」のミュージック・ビデオは、ホイットニー・ヒューストンが妊娠中に撮影されたことで知られている。ビデオ内では、彼女がリラックスした雰囲気で歌いながら、多くの女性たちとともにダンスをするシーンが描かれており、楽曲の持つポジティブなメッセージを視覚的に表現している。
特筆すべきは、ホイットニーのミュージック・ビデオに、R&Bシーンの重要人物たちがカメオ出演している点だ。たとえば、TLCのメンバーであるチリ、T-ボズ、レフト・アイが登場し、楽曲のエネルギーをさらに高めている。また、オリジナル版を歌ったチャカ・カーンも映像の中に登場し、ホイットニーとの繋がりを示している。
ビデオ全体の雰囲気は、1990年代のR&Bの持つ温かみとグルーヴ感を前面に出したものになっており、ホイットニーの自然体な美しさとカリスマ性が際立っている。
チャカ・カーン「アイム・エヴリ・ウーマン」
チャカ・カーンの「アイム・エヴリ・ウーマン」は、1978年にリリースされたディスコ・ソウルの名曲だ。この曲は、女性の力強さと自信を讃え、チャカ・カーンの力強いボーカルとグルーヴィーなリズムが特徴になっている。「アイム・エヴリ・ウーマン」は、チャカ・カーンの代表曲となり、彼女のキャリアにおける重要な一歩となった。また、後にホイットニー・ヒューストンがカバーし、さらに広く親しまれることになった。