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オリヴィア・ロドリゴ「ゲット・ヒム・バック!」

Olivia Rodrigo

オリヴィア・ロドリゴ「ゲット・ヒム・バック!」

オリヴィア・ロドリゴの「ゲット・ヒム・バック!(Get Him Back!)」は、2023年9月にリリースされたセカンド・アルバム『GUTS』の中でも特にキャッチーで挑発的な楽曲だ。彼女がティーンエイジャーの代弁者としてだけでなく、ユーモアと怒り、自己皮肉を自在に操るシンガーソングライターとして成長したことを証明している。この曲は、ロドリゴらしい感情の爆発とポップな感性が融合し、恋愛における“愛と復讐”の入り混じった複雑な心理を軽快なテンポで描き出している。

曲の概要

「Get Him Back!」は、タイトル通り「彼を取り戻したい」と同時に「彼に仕返ししたい」という相反する感情をテーマにしている。オリヴィアは曲の中で、かつての恋人への未練と怒りを皮肉と笑いに変えて歌い上げる。たとえば歌詞の中では、

“I wanna key his car, I wanna make him lunch”
“I wanna break his heart, then be the one to stitch it up”
といったように、愛と報復の間で揺れる主人公の心情を、リズミカルでコミカルに表現している。

楽曲のサウンドは、2000年代初期のガレージロックやポップパンクから強く影響を受けており、エレクトリックギターと打ち込みのドラムが絶妙に絡み合う。オリヴィアのしゃがれたボーカルが加わることで、エネルギッシュでありながらも等身大のリアリティを感じさせる。ラップのような語り口とキャッチーなサビが交互に現れる構成も印象的で、彼女の音楽的レンジの広さを物語っている。

作詞・作曲とプロデューサー

この曲は、オリヴィア・ロドリゴ(Olivia Rodrigo)と彼女の長年のコラボレーターであるダン・ニグロ(Dan Nigro)が中心となって制作されている。さらに、アイラ・ガロン(Ira Garon)、ジャック・デベンジン(Jack DeBevoise)、アマンダ・メンデス(Amanda Mendez)といったソングライターが加わり、複雑な感情をポップなメロディで表現する巧みなソングクラフトが実現している。

プロデューサーのダン・ニグロは、前作『SOUR』でもオリヴィアのデビューを支えた人物で、今回も彼女のボーカルのエネルギーと若さを最大限に引き出している。ニグロは、意図的にローファイでざらついた質感のギターサウンドを採用し、まるで一発録りのような生々しさを演出する一方、コーラス部分では現代的なポップの洗練されたプロダクションを加えている。その結果、楽曲全体が“カオスと完璧さの狭間”に立つようなサウンドになっている。

チャート

「Get Him Back!」はリリース後、SpotifyやApple Musicで瞬く間に人気を集め、SNS上でも話題となった。特にTikTokでは、曲のキャッチーなリズムと印象的なリリックがミームとして拡散され、数多くのユーザーがこの曲を使った動画を投稿した。アメリカのビルボード・ホット100では最高位19位を記録し、全英シングルチャートでもトップ40入りを果たしている。また、アルバム『GUTS』が全米アルバムチャートで初登場1位を獲得したことも、この曲の人気をさらに後押しした。批評家からは「オリヴィアの成熟とウィットが同居した傑作」「恋愛の痛みを笑いに変える才能」と高く評価されている。

ミュージック・ビデオ

ミュージック・ビデオはペトラ・コリンズ(Petra Collins)が監督を務め、オリヴィアと“もう一人の自分”が登場するユーモラスでスタイリッシュな映像に仕上がっている。映像の中でオリヴィアは自分のクローンとともに、悪戯をしたり、車を破壊したり、無邪気に笑い合う。これは、彼女の中にある相反する感情――愛する気持ちと復讐心――を視覚的に表現したものだ。映像は最新のVFX技術を駆使し、まるで二人のオリヴィアが本当に存在しているかのようなリアリティを持たせている。
撮影の色調は明るくポップだが、どこかカオスな雰囲気が漂い、楽曲の持つ“感情の爆発”を見事に映像化している。

「ゲット・ヒム・バック!(Get Him Back!)」は、オリヴィア・ロドリゴが単なるティーンポップスターを超え、ユーモアと痛みを巧みに融合させるストーリーテラーとしての地位を確立した一曲だ。彼女の歌詞には怒りや皮肉が込められていながらも、どこか人間的で愛らしい一面がある。
この曲は“愛と復讐”、“痛みと笑い”といった相反する感情を、まるでロックンロールの遊び場のように自在に行き来している。オリヴィア・ロドリゴが持つ感情表現の幅広さと表現力の豊かさを象徴する楽曲と言えるだろう。



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