洋楽

フランク・シナトラ「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」

Frank Sinatra

フランク・シナトラ「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」

1950〜60年代のアメリカ音楽界を代表するシンガー、フランク・シナトラ。その数ある名曲の中でも特に広く知られ、今なお多くのリスナーに愛されている楽曲が「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」だ。

この曲は単なるラブソングではなく、ジャズ・スタンダードとして世界中のアーティストにカバーされ続けてきた名作である。また、1987年公開の映画『ウォール街』の主題歌としても使用されており、楽曲の持つクールな雰囲気と、作品の世界観が見事に融合していた。

曲の概要

「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、もともとは1954年にバート・ハワードによって書かれた楽曲で、最初のタイトルは「In Other Words」だった。リリース当初はポピュラーソングとして穏やかなバラード調で歌われていたが、1964年にフランク・シナトラがこの曲を取り上げ、編曲家クインシー・ジョーンズによるビッグバンド・アレンジを施してレコーディングされたことで、ジャズ・スタンダードとしての地位を確立した。

シナトラ版の「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、彼のアルバム『It Might as Well Be Swing』に収録されており、このアルバムはカウント・ベイシー・オーケストラとの共演作品でもある。スウィング感溢れるリズムと、洒脱なブラスアレンジ、そしてシナトラの落ち着いた中にも情熱を感じさせるボーカルが印象的な1曲だ。

「Fly me to the moon / Let me play among the stars」という冒頭のフレーズはあまりにも有名で、恋人への思いを宇宙的なスケールで語るロマンチックな詞は、現代でも色褪せることがない。

作詞・作曲とプロデューサー

作詞・作曲を手がけたのはバート・ハワード(Bart Howard)。彼は長らくナイトクラブのピアニストとして活動しており、「In Other Words」は当初、特に注目を浴びることのない一曲にすぎなかった。

しかしながら、ジャズシンガーのペギー・リーがこの曲をレパートリーに加えたことで少しずつ人気が出はじめ、その後、ナット・キング・コールやジュリー・ロンドンなどもカバーを行い、徐々に注目を集めるようになった。

決定的なブレイクをもたらしたのがフランク・シナトラによるバージョンである。アレンジを担当したのは、後に大物プロデューサーとして活躍するクインシー・ジョーンズ。さらに、シナトラが当時契約していたリプリーズ・レコードのオーナーでもあり、自らがプロデュースを務めた。

クインシー・ジョーンズの編曲は、原曲の持つロマンティックさを損なうことなく、よりダイナミックかつ洗練されたジャズサウンドに昇華させており、これが今日に至るまで最も有名なバージョンとされている。

チャート

シナトラによる「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、シングルカットされたわけではないため、当時のBillboard Hot 100などのメインチャートに登場しているわけではない。しかし、アルバム『It Might as Well Be Swing』はリリース当初から高い評価を受け、ジャズやポップスのチャートで堅調なセールスを記録した。

また、NASAのアポロ計画との関係もこの曲の評価を高める要因となった。アポロ11号の月面着陸時に、船内でこの曲が流されていたという逸話があり、これが「宇宙に最も近い音楽」というイメージを決定づけた。

近年ではiTunesやSpotifyなどの配信プラットフォームにおいても安定した再生数を維持しており、時代を超えた名曲として多くの音楽ファンに親しまれている。

ミュージック・ビデオ

1960年代当時、現代のような公式ミュージック・ビデオの文化は存在していなかった。そのため、シナトラ自身による公式な映像作品としてのMVは存在しない。

しかしながら、テレビ番組やライブ映像、映画作品内でのパフォーマンスなど、シナトラがこの曲を歌う映像は数多く残っている。その中でも特に知られているのは、1965年に放送されたテレビ番組『Frank Sinatra: A Man and His Music』内でのパフォーマンスで、シナトラがカウント・ベイシー楽団とともにこの曲を披露しているシーンは、ファンの間で高く評価されている。

また、後年には多くのアニメや映画、CMなどでもこの楽曲が使われており、例えば日本では『新世紀エヴァンゲリオン』のエンディングテーマとしても知られている。

「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、シンプルながらも詩的な歌詞と、洗練されたジャズアレンジによって、時代を超えて愛される楽曲となった。

シナトラのヴァージョンは、その魅力を最大限に引き出し、多くの音楽家に影響を与え続けている。音楽ファンにとっても、ミュージシャンにとっても、時に原点に立ち返るような気持ちで聴き直したい一曲だ。

Frank Sinatra - Fly Me To The Moon (Live At The Kiel Opera House, St. Louis, MO/1965)


フランク・シナトラ「カム・フライ・ウィズ・ミー」

フランク・シナトラの「カム・フライ・ウィズ・ミー」は、1958年1月にリリースされたアルバムのタイトル曲であり、彼の代表的なスウィング・ナンバーのひとつである。世界を旅するようなロマンチックな歌詞と、軽快なビッグバンド・アレンジが魅力で、リスナーを優雅な空の旅へと誘う1曲となっている。シナトラのボーカルが持つ遊び心と洗練された雰囲気が見事に融合した名曲であり、今なお多くの音楽ファンに愛され続けている。


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