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ケニー・G「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」

Kenny G

ケニー・G「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」

映画『タイタニック』の主題歌として世界的なヒットを記録した「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」は、セリーヌ・ディオンのボーカル・バージョンで広く知られているが、その旋律は器楽演奏にも非常に適していることで有名である。その中でも、スムース・ジャズ界を代表するサックス奏者ケニー・Gによるインストゥルメンタル・バージョンは、原曲の感情的な深みを保ちつつ、また異なる角度からその美しさを引き出した名演として評価されている。

彼の演奏は、声ではなく音色そのもので語りかける。この楽曲におけるケニー・Gのサックスは、まるで人の声のように歌い、映画の情景や感情を、言葉を介さずに表現している。インストゥルメンタルでありながらも、聴き手の心に強く訴えかけてくる理由は、まさにその表現力の高さにある。

曲の概要

ケニー・Gによる「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」は、1999年にリリースされたアルバム『Classics in the Key of G』に収録されている。このアルバムはタイトルの通り、クラシックや映画音楽、ポップスの名曲をケニー・G流に再構築したものであり、「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」はその中心的存在のひとつである。

楽曲は原曲の旋律を尊重しつつも、アレンジや音色の選択によってケニー・Gの個性がしっかりと表現されている。全体のテンポは原曲とほぼ同じだが、アコースティック・ギターやエレクトリック・ピアノの柔らかなバッキングに支えられ、よりスムーズでリラックスした雰囲気を醸し出している。

サックスのメロディは、あくまで滑らかで繊細。音の入り方、終わり方、息遣いのようなニュアンスまでもが細かくコントロールされており、感情の機微がにじみ出ている。特に高音部の処理においては、フレーズの流れとサステインのバランスが美しく、プレイヤーとしての熟練度の高さがうかがえる。

作詞・作曲とプロデューサー

この曲の作曲は、映画『タイタニック』のサウンドトラックを担当したジェームズ・ホーナーによるもので、作詞はウィル・ジェニングスが担当した。ケニー・Gのバージョンはインストゥルメンタルであるため歌詞は登場しないが、そのメロディ自体が十分に物語性を帯びており、言葉がなくても感情は伝わる。

プロデュースはウォルター・アファナシェフとケニー・G自身によるもので、オリジナルのドラマティックなオーケストレーションを踏襲しつつも、よりコンテンポラリーなジャズのエッセンスを取り入れている。ストリングスは控えめに配置されており、あくまでサックスが主役となるようなミキシングがなされている。

また、ケニー・Gはソプラノ・サックスを主に使用しており、その明るく澄んだ音色が楽曲の透明感を引き立てている。彼のブレス・コントロールやトーン・メイキングの技術も、プロデュース面で大きく貢献している。

チャート

ケニー・Gの「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」は、ボーカルバージョンほどの世界的大ヒットとはならなかったものの、アダルト・コンテンポラリー・チャートやジャズチャートでは高評価を受け、多くのラジオ番組やホテル・ラウンジ、テレビ番組のBGMとして起用された。

特にアメリカのBillboard Top Contemporary Jazz Albumsチャートでは、『Classics in the Key of G』が上位にランクインしており、その中でも本曲はアルバムの代表曲として扱われている。CDの販売と共に、ケニー・Gの代表的レパートリーとして長く愛され続けている。

また、日本を含むアジア諸国でも人気が高く、来日公演などでもしばしばこの曲が演奏されており、彼の演奏を通じて「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」の新たな魅力に触れるファンも多い。

ミュージック・ビデオ

ケニー・Gによる「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」のミュージック・ビデオは、静謐で詩的な映像構成となっている。ケニー・Gが海辺でサックスを奏でるシーンや、水の流れ、光と影をテーマにしたイメージ映像が交錯し、楽曲の持つ余韻と感傷を視覚的にも表現している。

ビデオの中で注目すべきは、ケニー・Gの演奏スタイルにフォーカスが当てられている点である。彼のフレージングやブレスのタイミング、表情などがアップで映し出されており、演奏者にとっては非常に参考になる内容となっている。

また、映画『タイタニック』の映像を直接使用していないことで、より「音楽そのもの」に集中できる構成になっているのも特徴的である。感情を映像で補完するのではなく、演奏だけで伝えきるという姿勢は、インストゥルメンタル表現の真髄を感じさせる。

Kenny G "My Heart Will Go On Love" (Theme from Titanic) @Epcot 10/22/2018


セリーヌ・ディオン「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」

セリーヌ・ディオンの「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」は、1997年11月にリリースされた楽曲で、映画『タイタニック』の主題歌として世界的に大ヒットした。切なくも力強いバラードで、ディオンの圧倒的な歌唱力と美しいメロディが印象的な一曲。


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