音楽

プロコフィエフ「行進曲 作品99」

Prokofiev

プロコフィエフ「行進曲 作品99」

セルゲイ・プロコフィエフの「行進曲 作品99(March, Op. 99)」は、第二次世界大戦下のソビエト連邦で作曲された、力強くもユーモラスな吹奏楽の名曲だ。
プロコフィエフらしい皮肉とエネルギー、そして明快な構成が融合し、今なお多くの吹奏楽団に取り上げられている。

作曲の背景

この曲は1943年、ソ連赤軍のために吹奏楽編成で書かれた行進曲である。
戦時下という時代背景の中で、プロコフィエフは軍の士気を鼓舞するための楽曲を求められ、この作品を手がけた。

「行進曲 作品99」は、軍隊音楽の範疇に収まりながらも、プロコフィエフならではの風刺的ユーモアと鋭いリズム感が光る。
また、1945年には作曲者自身の手でオーケストラ版にも編曲され、より広い場での演奏が可能になった。

音楽的特徴

曲は明確なマーチの構造を持ち、短調で始まる印象的な金管ファンファーレによって開幕する。
リズムは端正で力強く、パーカッションと低音金管が行進の骨格をしっかり支えている。

中間部では、プロコフィエフ特有の奇妙なユーモアが顔を出す。
旋律はややコミカルに跳ね、時折調性が揺らぐことで、単調にならない緊張感とスパイスを加えている。

終盤ではテンポがやや上がり、全体が一気に盛り上がって壮大なクライマックスを迎える。
短く、約3分ほどの作品ながら、その中に戦意・風刺・芸術性が凝縮されている。

吹奏楽界での評価

「行進曲 作品99」は、今日でも世界中の吹奏楽団によって頻繁に演奏されている。
演奏時間が短く、構成も明快なため、アンコール・ピースや学校吹奏楽のレパートリーとしても親しまれている。

一方で、単純な行進曲としては済まされない複雑なハーモニーやタイミングも含んでおり、演奏者には意外と高度なアンサンブル力が求められる点でも評価が高い。

まとめ

プロコフィエフの「行進曲 作品99」は、戦時中という厳しい時代にあって、明快さとアイロニー、そして芸術的洗練を併せ持つ希少なマーチ作品である。
吹奏楽を学ぶ者にとっては、技術と音楽性をバランスよく磨く教材ともなり、聴く者にとってはただの行進曲以上のメッセージ性を感じさせてくれる一曲だ。
プロコフィエフが残した“戦いと笑い”の音楽を、ぜひ一度味わってみてほしい。

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