
Run-D.M.C.「ウォーク・ディス・ウェイ」
1986年、ヒップホップとロックというまったく異なる音楽ジャンルが正面衝突した。それがRun-D.M.C.とエアロスミスによる「ウォーク・ディス・ウェイ」だ。オリジナルは1975年に発表されたエアロスミスの楽曲だったが、この異色のコラボレーションは、音楽の垣根を壊し、新たなカルチャーを生み出す契機となった。
曲の概要
Run-D.M.C.による「ウォーク・ディス・ウェイ」は、オリジナルの骨格を保ちながらも、ヒップホップ的な要素を大胆に取り入れたカバーである。エアロスミスのジョー・ペリーとスティーヴン・タイラーもレコーディングに参加し、リフとボーカルの掛け合いが生き生きとしたエネルギーを生み出している。Run-D.M.C.のラップとロックのサウンドが融合したこの曲は、ヒップホップのメインストリーム進出を象徴する楽曲となった。
作詞・作曲とプロデューサー
この楽曲は、オリジナルと同じくスティーヴン・タイラーとジョー・ペリーによって作詞・作曲された。Run-D.M.C.バージョンのプロデュースを手がけたのは、若き日のリック・ルービン。彼はデフ・ジャム・レコーディングスの創設者の一人として知られ、ロックとヒップホップの融合にいち早く注目していた。
チャート
1986年にリリースされた「ウォーク・ディス・ウェイ」は、Billboard Hot 100で最高4位を記録。Run-D.M.C.にとって初のトップ10ヒットとなり、彼らのキャリアにおいても大きなターニングポイントとなった。MTVでもヘビーローテーションされ、黒人アーティストがロック・チャンネルで受け入れられるきっかけとなった。
ミュージック・ビデオ
この曲の象徴的なミュージック・ビデオでは、バンドとラップグループが壁を隔てて演奏し、それを打ち破って共演するという演出がなされている。ジャンルの壁、文化の壁、人種の壁を打ち破るという強いメッセージが込められた演出で、MTVを通じて世界中に衝撃を与えた。映像の力も相まって、この曲は音楽史に残るコラボレーションとして語り継がれている。
Run-D.M.C.の「ウォーク・ディス・ウェイ」は、単なるカバーではなく、音楽のジャンルや文化の境界を飛び越えた革新的な作品だ。ヒップホップとロックが手を取り合い、共鳴し合ったその瞬間は、現代のクロスオーバー文化の原点とも言える。